TOKYO Teshigoto

株式会社I.S.U.house上柳

椅子張

「100年200年と、長く使えるものを作りたい」

笑顔で話す椅子張職人の上柳が手掛けるのは、18世紀中盤にフランスのサロンを彩ったロココ調の、優美な装飾の椅子だ。フランスから取り寄せた木枠と生地を使ってオーダーメイドで椅子を張り、修理や張替も行う。

創業した先代が、1970年代に海外視察で見いだしたこの技法は、麻のテープを張った木枠に、ばねや馬の毛、ヤシの繊維をのせ、麻布で形作った座面に布を張る。椅子張りの頂点を極めるこの椅子は、しっかりとした弾力があり、腰を点で支えてくれる。ばねのクッション性が身体によいことは、人間工学の研究者のお墨付きだ。

5年、10年と座るうちに使う人の身体に馴染み、かけ心地がよくなっていくのが特長で、生地を張り替えながら何代にもわたって受け継ぐことができる。ショールームには、ルイ15世の時代の椅子をリペアした2脚が置かれている。

身体にフィットして心地よく感じられる、ウレタンフォームのような新素材も悪くはない。しかし上柳がそれらを使わないのは、長い目で見て劣化しないか、環境負荷がないものかがわからないからだ。

明治大正の頃、馬毛やヤシ繊維の代わりに使われたのが、藁(わら)だった。しかし今、表をはがすと、クッション部分の藁は粉々になっている。ウレタンフォームの出始め頃に使われた赤スポンジも、時間がたつと固まったり、粉になったりしてしまっていた。

対して古い馬毛は、洗うと弾力が復活する。ヤシの繊維は、土にかえる。それを見てきた上柳は、使われだしてからまだ数十年しか経たないウレタンフォームを使わざるを得ない場面でも、慎重に選んでしまうという。

2010年に、二代目として工房を継いだ上柳。この10年は、オリジナル商品の開発を手掛けるとともに、出し惜しみせず技術を伝えていこうと、後進の育成にも尽力してきた。結果、黄綬褒章(おうじゅほうしょう)をはじめとする各種の表彰を受け、一年かけて作製する椅子張教室は20年余りも続き、数日で仕上げる椅子張り体験のリクエストも舞い込んでいる。

フランスから父が持ち帰った椅子張りの技術は、上柳の手で、さらに次の世代へと引き継がれていく。

株式会社I.S.U.house上柳
〒179-0081 東京都練馬区北町6-31-20
TEL 03-3931-5040
上柳 征信

工房見学
なし
工房体験
あり

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