TOKYO Teshigoto

株式会社富士製額

14 東京額縁

画廊などからのオーダーを受けて制作を行う額縁職人は、直接にお客さまと接することはほとんどない。絵画を美しく見せることが役割な額縁と同様に、裏方的な存在だ。

製材から仕上げまで一貫して行い、オーダーメイドで細やかに対応ができるという点は強みだ。しかし東京で額縁が作られており、それが伝統工芸であるという認知すらされていないことは、会社として、ひいては業界としての弱みとなっている。

そんな弱みを克服することはできないか。
若き額縁職人の栗原は、そう考えた。

すべてがオーダーメイドの額縁づくりには、要望を聴き取る力と、デザイン力、そして技術力が要求される。この絵にあわせ、予算内でこんなものが欲しいという言葉から、具体的には表れていない思いをくみとり、ぴたりとはまるものを作っていく。

「かゆいところに手が届くように、こういうものが欲しかったんだ、と言われるものを作れなくては」

そう言って表情を引き締める額縁職人は、たゆまず高みを目指し続けている。

新たな東京額縁の未来を構想する彼は、かつては洋服のデザインを学ぶ学生だった。就職口がなく、「額縁って、何?」と思いながら、祖父に紹介された会社を見学した彼は、そこに洋服と同じ面白さを見いだした。

額縁の役割は、空間を切りとることだ。切り取ったものを美しく魅せ、引き立てる。しかも、中身がなくても、かっこいい。そんな額縁そのものの美しさを、そして壁に飾るという文化を、若い人にも知ってほしいと、栗原は考えている。

額縁をつくる魅力とは、自己表現ができること。成長の手ごたえが感じられ、画廊や個展で自分が作った額縁にぐっとくる、そういう瞬間が味わえることだ。

額縁職人になってから、十年余り。一人前なんてまだまだ遠いと、栗原は謙虚にかぶりを振る。オーダーにあわせて、常に異なる作業の連続となる額縁の仕事は、生涯をかけるに足る楽しい勉強なのだ。

株式会社富士製額
〒116-0001 東京都荒川区町屋6-31-15
TEL 03-3892-8682
栗原 大地
frame.da1@gmail.com
https://www.fujiseigaku.com/

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