スウィングする鏨。
銅のおろし金は、江戸時代中期に編纂された「和漢三才図会(わかんさんさいずえ)」に登場。料理に欠かせない調理器具として、当時から庶民の間で広く使われてきた。銅板に鏨(たがね)を一つ一つ打ち込み、小さなたくさんの刃を立てて作る銅おろし金は、食材の組織を必要以上に壊さないため、大根おろしも水っぽくならず、また口当たりも柔らかい。一度使うと手放せない品ではあるが、機械による大量生産に押され手仕事で製作する職人は激減。「江戸幸 勅使川原製作所」は、東京では唯一の工房となってしまった。勅使川原隆氏は工房の二代目。父親のもとに弟子入りしたのが18歳のことで、もう60年以上この仕事に携わっている。研鑽を積んだ勅使川原氏だが、「鏨を打ち込む一刀目がいちばん難しい」と言う。リズムが大事ということだろう。工房にはコン、コン、コンと心地よいリズムが響く。仕事中に流れているのは、ジャズ。スウィングするように、鏨を打ち込む音がリズムを刻み、見事な刃を備えた銅おろし金が出来上がっていく。
江戸幸 勅使川原製作所
〒124-0001 東京都葛飾区小菅1-28-8
TEL 03-3602-1418
勅使川原 隆
- 工房見学
- なし
- 工房体験
- なし
工房見学、工房体験をご希望の方は事業者にお問い合わせください