シルクロードを通って日本に伝えられた組紐の歴史は、1400年もの時を遡る。仏教とともに大陸から伝わってきて、貴族の装束を飾り、武士の刀を華やがせ、そして着物のお太鼓を結ぶ帯締めとして、日本の文化とともに変遷を重ねてきた。
そんな組紐の手染め・手組みの伝統を守りつつ、更なる展開を模索しつづけているのが、承応元年(1652年)創業の道明だ。
赤、青、黄、橙、紫、緑、茶。
たった7色の染料で、年間に数千色の染めをする。
色を出すための、決まったレシピは存在しない。職人は、その日の天気から自身の体調に至るまでの様々な要素を加味して、色見本と照らし合わせながら染料を調合し、絹糸を泳がせる時間を判断する。
乾かし、整経(せいけい)した後、重りに巻いて台に取り付けた絹糸を、職人たちがこつこつと組んでいく。50年あまりも続く組紐教室を経て職人となる方もおり、受講生のなかには職人と並ぶ腕を持つ方もいるという。
組紐のデザインを考えるのは、製造から販売までのあらゆる工程を手掛ける社員たちだ。
目に映るさまざまな風景やものごと、時には古今東西の絵画などをも参照しながら、狭いところ、小さいところに入り込んでいく日本のお家芸そのままに、一本の線の中にひとつの世界を描いていく。
職人の手が組む紐は、帯締めだけにとどまらない。
2015年に立ち上げた洋装部門のDOMYOでは、ネクタイやピアス、ブローチ、ブレスレットなど、伝統ある組紐の技術を生かした洋装のための新たな商品を展開する。
「市場がグローバル化してくると、日本は世界の中の一つの地域だという見方もできるようになる。かつては、地域から全国に特産品が広まったのと同じように、日本から特長のあるものを世界に広めていくのは、一つの流れだと思う」
社長の道明葵一郎さんは、伝統工芸の未来をそのように見通す。
千年以上の時の中で、無数の職人が重ねてきた日々のひとつの流れが、東京・上野池之端の地にある道明の組紐として結ぼれ、人々の日常の彩りとして、いま、世界へと広がっていこうとしている。
株式会社 道明
〒110-0005 東京都台東区上野2-11-1
TEL 03-3831-3773
道明 葵一郎
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