0.2~0.3ミリほどのごくごく薄い色ガラスの内側に、さらに透明なガラスを吹いていく。二人一組で吹く“ポカン工法”という“被せ(きせ)”の新たな技法を編みだしたのが、中金硝子の初代、中村金吾だ。
セロファンのように薄い被せが、切子の模様を美しく引き立てる。透明な“透きガラス”のみだった江戸切子界が、華やかな“中金色被せ硝子”に彩られた。
そんな中金硝子の技術の冴えは、吹きガラスの技法にとどまらない。
ガラスの原料となる珪砂(けいさ)を、1400度もの高温となる坩堝(るつぼ)で“煮あげる” 作業は、料理にも例えられるという。プロの料理人が単にレシピ通りに料理を作るのではないのと同様に、鮮やかに発色し、かつ切子しやすいガラスを仕上げるためには、職人の経験と勘がものをいう。
色づけのために加える鉱石によって、ガラスの性質は変わる。自然のものだから、産地や季節、気温や時間などのさまざまな条件により、発する色あいも異なってくる。色や硬さをみながら、温度や時間を調整し、むらが出ないように一昼夜かけて仕上げていく。坩堝から種をとるときや、吹いたときの伸び具合で、ガラス職人は“煮あがり”を確かめる。
切子職人は、そんな中金のガラスを「弾力があって柔らかく、刃が入りやすい」と、高く評価する。
内側に吹くガラスは、透明だけにとどまらず、金、青、緑、ピンクなど、数多くの色がある。そこに、紅、藍、藤、緑、空の被せを重ねることで色がかけ合わされ、さらに豊かな彩りがハーモニーを奏ではじめる。
色が少しでも異なると、お客さまに出せないと言われた時代もあった。
しかし、発色にある程度の幅が出てしまうのは、自然の摂理。人の顔がひとりひとり違うように、鉱物にもそれぞれ個性がある。だから多少の色の異なりは、自然からの“ギフト”、一期一会の出会いとして楽しんでもらいたいと、金吾の孫娘である岩渕は語る。
ガラスの製造、卸はもちろん、切子の加工も自社で行い、販売する。金吾の孫たちが率いる中金硝子は、今日も江戸硝子の伝統を守りながら、その先端を走り続けている。
中金硝子総合株式会社
〒132-0035 東京都江戸川区平井2-11-29
TEL 03-3684-4611
岩渕 道子
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