ぱちんという音が、真面目な仕事の証。
扇子を持っただけでその善し悪しが分かるという。江戸後期より続く「雲錦堂深津扇子店」の当代、深津佳子さんの実父・深津鉱三氏は、坂東玉三郎や中村時蔵など舞扇を納める名工として知られた。ある踊りの師匠は、鉱三さんの舞扇を「持った時によい形に構えられる、踊りの腕前が一段も二段も上がった気がする」と評したそうだ。名工である鉱三氏に師事した佳子さんは、雲錦堂深津扇子店の五代目にあたる。およそ30もある扇子づくりの全工程を一人で行う。扇子を閉じた時に聞こえるぱちんという小気味よい音は、一つ一つの工程で手を抜かず、生真面目に仕事を積み上げてきた証だ。仕立てのよさはもちろんだが、扇面の洒脱さも深津さんの扇子が愛される理由の一つ。一点ものの描き絵は、叔父で日本画家の池上隆三氏が残したもの。「三社網」「毘沙門格子」「氷割(ひわれ)」「鮫小紋」「立涌(たてわく)」など江戸ゆかりの紋様を配した扇子は、江戸の粋好みを強く感じさせる。普遍的な美しさを持つ紋様だが、当代は色使いや配置の妙にその時代らしさを加えている。他の伝統工芸や現代作家とのコラボレーションにも意欲的に取り組んでおり、江戸扇子を持つ楽しさを年代や性別を超えて広く世に伝えている。
雲錦堂 深津扇子店
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