TOKYO Teshigoto

株式会社モンブラン

東京洋傘

「会長はよく『ロマンを売るんだ』と言っていた。『雨の日は憂鬱だから、気分だけでも晴れやかになる傘をみんなに持ってもらいたい』と」

伝統工芸士の山口君枝は、そんな義父の言葉を懐かしむ。

昭和35年にモンブラン山口を創業した会長が、心底惚れ込みこだわったのが“ほぐし織”という職人の手間をかけた織物だ。

数センチに一本づつ“仮糸”(横糸)を入れて“仮織り”した布に、“手捺染(てなっせん)”という手で型染めをする技法で一色づつのせていく。染め上がった布から仮糸を抜き、縦糸だけにしたものをさらに“本織り”するという複雑な工程を経て、独特のぼかしたような風合いの絵柄が生まれる。

織りあがった生地は、傘の種類ごとに異なるサイズに裁断し、ミシンで縫い合わせて傘の骨に取り付ける。「モンブランといえば、ほぐし織」とまで言われるこの生地は、柄をあわせたり生地のゆがみを避けたりするのが難しく、どんな傘職人でも扱えるわけではない。

そんな彼らにとり、自作する型は傘づくりの命だ。生地を切る包丁も、何本も用意しておいて切れなくなったら次々と取り替える。
型の作り方や包丁の使い方には、人それぞれのやり方がある。型の違い、包丁の当て方や引き方ひとつで生じるコンマ以下のずれが、16枚の生地を縫い合わせるうちに大きな狂いとなるから、他の人のものは使えないという。

気温の違いや湿気のあるなしで生地は1ミリほど伸び縮みする。だから新しい生地を使う時にはまず見本張りをして、職人自身が納得できる形が出ることを確認する。モンブランのタグに作り手の印が押されているのは、ひとりひとりが責任をもって作っているという気概の表れだ。

そんな伝統を受け継いだ山口は、結婚前から会社を手伝い、大正生まれの職人に孫のようにかわいがられながら傘づくりのいろはを習ってきた。何人もいる職人のやり方のいいところを目で盗み、会長が考案したモダンな柄を洋にも合うようにと、色数を増やしてアレンジしている。

印象派の絵画のようにやわらかくぼかしたような“ほぐし織”の柄は、レンズの役割を果たす雨粒によりさらに美しさが際立つという。

こんな傘を手にする人は、きっと雨の日が待ち遠しくなるに違いない。

株式会社モンブラン
〒130-0012 東京都墨田区太平2-19-1 佐藤マンション1階
TEL 03-6751-9748
山口 君枝

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