額装縁起羽子板「三番叟」
23 江戸押絵羽子板貴重な絹の端切れを使い
武家の婦女の嗜みと言われるほどに
盛んに作られていた押絵と
涼やかに厄除けの音をたてながら
天に向かって羽根を突きあう
縁起物の羽子板が
職人の手によって組み合わされ
まるで歌舞伎役者のブロマイドのように
江戸を風靡したのが、江戸押絵羽子板だ。
『寿式三番叟(ことぶきしきさんばそう)』
という能や歌舞伎の古典的な演目では
天下泰平を祈念する
翁と千歳(せんざい)が厳かに舞った後
三番叟が軽快な舞で、五穀豊穣を願う。
めでたく愛嬌のある三番叟の羽子板と
武神で財神の凛々しい関羽を描いた
お札を組み合わせたのが
『額装縁起羽子板「三番叟」』だ。
地固めや種まきなどの
農につながる所作を踊る“猿”の姿は
厄が“去る”にもつながっている。
猿は烏帽子をかぶり
千年生きるという、鶴の衣装をまとう。
背景の緑は春を
手にした鈴は、清流の音を表す。
すべてが物事の始まりを寿ぐ縁起ものだ。
厄除けの赤地を背景に
青龍偃月(えんげつ)刀を携え
長い髭(ひげ)をたくわえた武将は
特徴的ないでたちにより、関羽と知れる。
また、関羽の長い髭は
山羊に通じると考えられていた。
また、曹操に厚遇されつつも
主君と慕う劉備を裏切らなかった関羽は
“義”の人といわれている。
“羊”と“我”をあわせると
“義”という文字になる。
そんなことから江戸っ子は
羊を関羽と重ねて考えていた。
“義の人”を慕う子羊が
近寄っていく様子が描かれた絵札は
厄除けでもあり、富を願うものでもある。
そして、羽子板の猿と絵札の羊を
組み合わせると
坤(ひつじさる)となる。
坤といえば
鬼門である北東の艮(うしとら)とは
逆方向の裏鬼門、南西を表す方角だ。
江戸城の鬼門の方角には浅草寺が
そしてその先には、日光東照宮がある。
浅草寺の歳の市で羽子板を買うのが
縁起が良く、厄除けとなる所以だという。
浅草寺の五重塔の鬼瓦は
江戸城をにらんでは申し訳ないと
裏鬼門となる坤には猿の顔がついている。
坤に猿の姿を鬼門避けとして祀るという
庶民の間にも広まった風習は
このことも影響しているのかもしれない。
江戸時代から続く老舗の
卓越した職人の技と
わかる人だけに通じる洒落や教養の数々。
そんな江戸の粋と
手にする人の厄を落とし
繁栄を祈る思いが
この額装には詰め込まれている。
- 額装縁起羽子板「三番叟」
- 素材:額の背景:繻子織(正絹帯地) 羽子板:桐 絵巻:金襴
押絵:正絹、レーヨン、絹、ポリエステル、箔紙、ニッケル(鈴)、ボール紙
押絵の彩色:胡粉、膠、顔料、筆
羽子板の背景:和紙、砂子
版画:和紙、顔料 額:木、ガラス
※写真は撮影のため、ガラスを外しています。
サイズ:B4(縦364mm×横257mm)、厚さ35mm
種類:1種類
希望小売価格:¥19,800(税込)
※本サイトに掲載している情報は2024年5月現在のものです。
※手作り品のため、サイズ、色、形は実際のものと多少異なります。
※商品の仕様および希望小売価格は、予告なく変更することがあります。